セルロイドサロン
第25回
松尾 和彦
東京・横浜セルロイドツアー
 皆様、本日はようこそ私どもセルロイドメモワール観光東京・横浜セルロイドツアーにご参加いただきましてありがとうございます。私、本日の案内役を務めますお出かけ大好きミーコでございます。私のことについて詳しくお知りになりたい方は「セルや」「平井玩具製作所」のページをご覧になってください。

 先ず御案内いたしますのは「昭和レトロ商品博物館(青梅市住江町六五)」でございます。ここは昭和という時代に使われていました商品の数々を展示しています博物館でございます。もちろんセルロイド製品も多数ございます。昭和という時代はセルロイドが今よりもずっと身近でございました。今ではプラスチック製になってしまっているものを総てセルロイドに置き換えていただければ、どれほど一般的であったかがお分かりいただけると思います。中でも子供の玩具は、高級品から駄菓子屋で売っていたような商品まで総てセルロイド製であったと申し上げましても過言ではございません。

 次に向かいますのは西荻窪駅(東京都杉並区)周辺のアンティークショップ街でございます。まずは北口左手にあります交番でマップをいただきましょう。アンティークショップ六十八店、アートクラフトショップ十九店が掲載されています。目的のお店はございますでしょうか。昭和レトロ商品博物館でご覧にいただきました商品が見つかるかもしれません。ここでは自由時間といたしますので散策をお楽しみください。

 続きまして都営地下鉄三田線志村坂上駅に向かいます。え、公園があるだけでセルロイドに関係があるものは何もないですって。いえいえ、この小豆沢公園こそセルロイドそのものなのでございます。かつてここにはダイセル化学工業東京工場がございました。ここで大正、昭和の時代にはセルロイドを製造していたのです。かの有名な田所康雄氏も忙しく働いていました。え、田所康雄氏を御存知ではない。なるほど本名ではお分かりいただけないのも無理はありません。後ほどこの方の芸名を紹介するといたしましょう。

「上野はおいらの心の駅だ くじけちゃいけない人生があの日ここから始まった」
 失礼をいたしました。この上野駅からも近い中屋万年筆(東京都台東区東上野二ー五ー十)は、プラチナ万年筆の創業者一族の方の万年筆製造業者で今でもセルロイド万年筆を製造しています。松原功祐さんという轆轤名人の方が職人技を発揮されました万年筆を一本御手元に置かれるのもいいかと思います。

 浅草は一年中が縁日のような町でございますが、ここの南には玩具メーカーとして有名なバンダイの本社もありますように玩具の町としての側面も持っています。しかし本日は南ではなく北に向かいます。
 隅田川沿いに北に向かいますと日本玩具資料館(東京都台東区橋場一ー三六ー十
ツクダグルーフ゜ビル九F)がございます。玩具の歴史が良く分かる資料館ですがロリーポリー、キューピーなどのセルロイド玩具も多数展示されていますので、私も嬉しくなってしまいます。

 荒川区にはタチカワ(町屋三ー三一ー一八)がございます。一九一九年(大正八年)の創業以来、セルロイド製品に携わり続けられていて今でも縁起物などを作られていますので、運が良ければ製造現場に立ち会えるかもしれません。

「今日も涙の 今日も涙の日が暮れる 日が暮れる」
 おや、いつのまにか葛飾柴又に来てしまいました。ここの駅前にあります銅像をご覧ください。この銅像こそかの有名な田所康雄氏でございます。そう、田所康雄氏の芸名は渥美清なのです。「男はつらいよ」などの活躍を知らない方はいらっしゃらないでしょう。渥美清となる前にはダイセル化学工業東京工場で働いていたのです。

 この葛飾区にあります渋江公園には「葛飾区セルロイド工業発祥の地」との記念碑が建っています。この地にはキューピーなどのセルロイド人形に力を入れ、葛飾区セルロイド工業の始祖と言われました千種稔氏の工場がありました。敷地千坪、従業員千人という大工場でしたが、第一次大戦後の長引く不況によって廃業に追い込まれてしまいました。
 しかしここで技術をつけました人々が小組織や家庭内にセルロイド加工を持ち込み、また新しい資本による企業群が形成され葛飾はセルロイドの町となっていったのです。

 渋江公園の近くには「鬼に金棒。金型はカミジョー」のカミジョー(東京都葛飾区四ツ木一ー二五ー三)がございます。キューピー、ロリーポリー、ミッキー人形など数多くのセルロイド玩具の金型を製造してきました。セルロイドといかに関わってこられたかはサイトをご覧になってください。

 そこから南に下った中川沿いにはセキグチドールハウス(東京都葛飾区西新小岩五−二ー一一)がごさ゛います。モンチッチで有名なセキグチは以前にはセルロイド人形を作っていました。さらに前には布海苔製造を兼ねる農家でした。その頃に使っていた農具倉庫の中からセルロイド玩具が大量に見つかったのです。この貴重な資料を常時展示する場所として、このドールハウスが開館されたのでございます。人形の他に金型もありますが、もちろんその金型はカミジョーのものでございます。

 足立区へ足を伸ばしますと私、お出かけ大好きなミーコの生みの親平井英一さんのセルやがございます。今では一軒だけとなりましたセルロイド玩具の業者ですが、これからも頑張って作ってくれると言っておられます。

 銀座と言えば日本一の繁華街ですが、アンティークモール銀座(東京都中央区銀座一ー十三ー一)も日本一のアンティークショップでございます。上から下までとにかくアンティークですので一日いてもあきない場所でございます。

 さあ、横浜に行きましょう。港の見える丘公園、外人墓地など港町横浜らしい場所の近くに某テレビ番組でお馴染みの北原照久さんのブリキのおもちゃ博物館(神奈川県横浜市中区山手町二三九)がございます。北原さんはブリキのおもちゃだけではなく、セルロイドにも興味を持たれていますのでセルロイド玩具も多数揃っています。

 このツアーの締めは、やはりセルロイドメモワールハウス横浜館(神奈川県横浜市港北区高田東一−一ー二○)となります。二○○五年三月二十五日に開館いたしました日本で唯一のセルロイドの博物館でございます。ここの見学をもちまして解散とさせていただきます。

 なお本日、紹介いたしました場所は事前予約が必要な場所や公開時間が限られているところなどもございますので、出かけられますときにはお調べになってからにするようにしてください。本日はどうも東京・横浜セルロイドツアーにご参加いただきましてありがとうございました。またの出会いを楽しみにしております。

著者の松尾 和彦氏は歴史作家で近世、現代史を専門とし岡山市に在住する。


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