綿業会館、川島織物セルコン探訪記



 第一回シンポジュウムを終えた翌日、大阪の綿業会館と京都の川島織物セルコンを探訪することとなりました。



 地下鉄の本町、堺筋本町の両駅から五分ほどの場所にある大阪の綿業会館(日本綿業倶楽部)は、昭和三年(1928年)に東洋紡績専務取締役の岡常雄氏未亡人より故人の遺言として100万円の寄付を受けました。これに関係業界からの拠出金50万円を加えて三年後に竣工いたしました。

 この金額が如何に多額であったかということは、同じ年に大阪市民の寄付によって出来ました大阪城が46万円であったことを見れば分かります。

 設計者は旧興業銀行本店、旧ダイビル、神戸証券取引所などを設計したことで知られる渡辺節、ヘッドドラフトマンは横浜市庁舎、高輪プリンスホテル、日生劇場などを設計した村野藤吾です。

 この二人が関わったのですから建築学の総てを駆使したとも言える造りとなっており、一階のホールはイタリアルネッサンス調、三階談話室はイギリスルネッサンス調でまとめられており、机椅子等の備品も最高クラスのものを取り揃えています。また貴賓室と言われる特別室、アンモナイト化石の入った天然石を床に使った通称鏡の間と呼ばれる会議室などがあります。

 頑丈に作られていたために大阪空襲にも耐え、窓ガラス一枚カーテン一枚が被害を受けただけでした。

 これだけの建物ですから日本史にも登場します。満洲事変の調査団として知られるリットン卿の一行が訪れて大阪経済界代表と会談した場となっています。余談ですがリットン卿として知られるヴィクター・ブルワー・リットンの夫人はかつてウィンストン・チャーチルの恋人でした。

 この綿業会館の見学会は11時からの食事つき見学が2500円、14時30分からが500円となっていますが、非常に人気があり場合によっては半年待ちとなるほどです。



 劇場の緞帳、呉服の帯、カーテンなどで知られる川島織物セルコンは一方では飛行機、自動車の内装も手掛けるという新旧織り交ぜた事業を行っている会社です。

 御料車の内装を行っている関係で皇室関係の方々は、ほぼ全員が見学に訪れています。こちらも歴史に登場していて大津事件で負傷したことで知られているロシア皇太子ニコライ二世も来訪しています。

 このような方を迎えているからでしょうか、とても教育が行きとどいていてどなたも非常に丁寧な応対をしてくれます

 こちらにあります織物文化館には百花、葵祭、難波津などの作品選、飛鳥奈良時代などの古代裂、中国エジプトなどの古代裂などを所蔵しています。他に工場見学も可能でちょうど製作中の緞帳を見ることが出来ました。

 川島織物セルコンの見学料は無料ですが、少し遠いのが難点です。でも遠路訪れるだけの値打はあります。



松尾 和彦


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