研究調査報告書
セルロイドハウス横浜館 館長 岩井 薫生(イサオ)
石崎 又四郎氏に関する調査報告(第一報)

まえがき
2016年2月はじめ、同氏の関係者からセルロイド事業に祖父が関係した記憶があり,同氏の足跡を知りたいとの要請が届いた。

同氏に関する資料を横浜館の図書室で調査した結果石崎 又四郎氏は昭和の初期から戦時中までセルロイド再生品及び雑貨等製造および販売で活躍した事実が判明した。
残念ながら今次大戦後の昭和20年以降、同氏及びその事業については現時点では記録がなく今後の研究に俟つことにする。

調査事実
同氏は明治24年9月16日栃木県河内郡に生まれ、大正4年上京。東京府浅草区北富阪町所在の森野セルロイドに入りセルロイド製造、加工販売に従事する。
大正6年下谷区入谷町で独立を果たし開業した。同氏は人柄が誠実、研究熱心で、有力者の後援を得て事業が進展した。
大正10年店舗を拡大し、尾久町上尾久1820で事業を続ける。
業種はセルロイド再生原料、生地パイプ棒販売を主とした。
昭和に入り取扱品目も広がり昭和初期から10年代には、生地販売の他玩具玉類製造も販売品リストに加えている。

石崎 又四郎商店について日本セルロイド紳士録(著名人物及事業)に次のような資料が残されている。
1.登録者氏名  石崎 又四郎
2.生年月日 明治24年9月16日
3.本籍 荒川区尾久町4−1820
4.出生地 栃木県河田郡本郷村字上狭(注。河田郡は河内郡の間違いと思われる)
5.勤務先位置 個人事業主
6.自宅住所 荒川区尾久町4−1820
7.電話 下谷8254
8.セルロイドに従事したる年月日 大正7年
8.現在の職業又は地位 セルロイド生地並原料販売、セルロイド玩具並雑貨製造
9.取引銀行 日本昼夜銀行(尾久支店)
10.公務又名誉職 家屋貸家組合評議員、尾久安全会相談役
11.年生産額 20万円也
12.創業及沿革 大正7年創業

以上の資料から同氏は仕事熱心で、同業者及び町内の事業にも協力的で、事業家としての資質に富んでいたことがわかる。
家屋貸家組合の関係している事実からから本業のほかに別途不動産を保有していた可能性が高い。当時はかなりの資産家であつたことがうかがわれる。

今後の研究調査の課題
セルロイドハウス横浜館所蔵の初期的な資料から石崎 又四郎氏の人となり及び人物像の輪郭がつかめたが、具体的な仕事の内容等については当時の同業者や各種企業の記録類や資料を参考に調査する必要がある。
また日本昼夜銀行尾久支店がセルロイド業者に対してかなりの金融取引を実施していたと思われ同銀行および後継金融機関等の関係者等から調査を進めていくことにより大正末期,昭和初期、昭和10年代から戦争までのセルロイド加工販売業の実態を解明することが可能と思う。
石崎 又四郎商店を事例研究とすることによりセルロイド産業、特に関東及び東京の中小セルロイド加工業の盛衰が研究できると思う。セルロイド産業文化研究会の今後の事例研究テーマの一つとして取り上げたい。

以上初期的な資料を基に第一報としてまとめて報告する。

参考資料:日本セルロイド紳士録(著名人物及び事業)
                     昭和17年8月15日発行 非売品
                     著作兼発行人 川上進一
                     印刷所 永栄堂印刷所
            
       日本セルロイド商工大観 昭和3年12月20日発行, 
                       述者 川上進一
                       印刷所 永栄堂印刷所

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